Skip to main content

卓越した顧客体験を実現するために

Written on .

日本においてMRの役割は、製品を医師に紹介し、届けることです。しかし、その方法は時代に併せて変わってきています。そして、機敏に対応できる企業は利益を増やし、そうでない企業は競合他社に遅れをとることになっています。このような新しい流れに踏み込む前に、従来の営業戦略のうち、今、MRが最も使っている手法を見てみたいと思います。

  • 手紙やパンフレット、会社の記念品などを直接医師に送る
  • 定期的に病院やクリニックを訪問し、対面でのミーティングを行う
  • 医療・医学関係者とのアポに便乗する
  • Skype、Zoom、WebEx、Teamsなどを使ったテレビ会議をとにかく行う
  • 決定権を持つ人につなげてもらえることを期待して、営業電話をかける

「上記のすべて」という答えが多いかもしれません。各手法のもたらす成果は大きく違うはずです。今の時代あまり驚くことはないと思いますが、手紙は最も生産性の低い手法です。ただ、あるディレクター職に就く方は、常に「何か動いていたい」ことから、手紙を送るのが好きだと言っていました。また営業として気をつけなければならないのは、政府のガイドラインに反した活動を行ってしまうことです。大手企業が、ライバル企業に告発されてしまうことも珍しいことではありません。

私たちは今、面白い状況に置かれています。新型コロナウイルスのパンデミックがもたらした「ニューノーマル」は、積極的な販売モデルをスローダウンさせました。あるセールスディレクターは、今の流れを冷戦時代の軍拡競争に例えたほどです。今までの製薬会社の販売モデルとは、現場に何百人ものMRを送り込み、意思決定者と話ができるチャンスを何時間も待ち続けるスタイルでした。昔はそれでうまくいっていたのです。正直なところ、この形が日本でなくなることはないでしょう。しかし今まで通りうまくいくとも思えません。

パンデミックの余波で、MSD、武田薬品、ファイザー、ヤンセンなどの企業が、顧客のニーズ、欲求、願望に焦点を当てた新しい営業の方向性を見出しています。顧客体験を営業プロセスの中心に据え、大手製薬会社は今、この新しい取り組みをリードするために必要な人材を求めています。データを使ってカスタマージャーニーを分析・理解できるMRや、理想的な営業プロセスのための新しい知識や洞察を明らかにできるデータサイエンティストが、「解約したり他社に移ることのないロイヤルな顧客ベースを築く」という目標に向かって、この取り組みを進めているのです。

しかし、これを実現するのは簡単なことではありません。マッキンゼーは、このような情報を得るには、単に顧客を調査するだけでは足りないと発表しています。(出典: https://www.mckinsey.com/capabilities/growth-marketing-and-sales/our-insights/prediction-the-future-of-cx)

実は、多くの場合、顧客は何を望んでいるのか、自分たちでは見えない部分もあります。その代わりに、さまざまなデータソースをすべて活用し、その結果を分析・解釈して予測を立て、競合他社に差をつけるために何が必要かを前向きに考えなければなりません。データ分析は新たな競争力ですが、皆が同じ土俵で戦えるわけではありません。多くの企業は、このデジタル世界にどのようにアプローチすればよいかわからないでいます。しかし中には、何年も前からこの新境地を開拓し、成功に必要な人材を素早く見極めている企業もあります。あるフランス系多国籍企業の幹部は、現在のビジネスが求めるスピード感について次のような例を教えてくれました。「コロナ前のことですが、ある候補者にオファーを出したのは、その人が面接を終えてすぐでした。その人が電車に乗る前に連絡したのです。」

製薬業界の販売環境が今、根本的に変わりつつあります。そんな中で成功する企業は、適応する準備ができている企業、俊敏性を維持できる企業、顧客の真のニーズを理解するために実世界のデータを分析できる人材に投資することをいとわない企業、医療従事者が苦労している課題に焦点を当て、買い手の信頼できるガイドとして寄り添うことができる企業だと考えます。

日本において、MRの役割がなくなることはないでしょう。しかし、これからは固定の役割ではなく、分析を計画し、適切に実行するという、常に変化し続ける役割となるでしょう。企業は、今後ますますデータを活用して、営業チームと医療チームの効果を高めていくと考えます。担当者が医療従事者とコミュニケーションを図っている間は、ポジティブな体験を提供することに集中しなければなりません。これが、今、私たちが生きる未来なのです。競合他社は、これを予測しており動いていることでしょう。そして貴社もこの考えを実行すべき時期がきています。

貴社の営業部門は、準備はできていますか?

Share This Post