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良い時と悪い時こそ成功への転機である

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日本企業の関連子会社にあたる米国製薬企業を舞台にした、あるストーリーをご紹介したいと思います。その会社は、2012年に転換期にありました。当面のパイプラインは未定で、社員の士気も低迷していました。長期的な展望としては希望がありましたが、その当時、社員のモチベーションを保つことが難しくなっていたのです。そんな時に新しくナカガワさんが社長として就任しました。危機的状況において、まさに新しいリーダーとして適任者でした。ナカガワさんは、「前進するための失敗」を推奨しており、チームに対して、失敗を覚悟で計画を立てるように指示したのです。なぜそれを「良し」としたかというと、「前進は行動によってなされる」という信念に基づいているからです。彼が築き上げた環境は、リスクを取ることを恐れないものでした。コンプライアンスにしろ、人の扱いにしろ、おかしいと思ったらすぐに行動に移しました。それはどんな小さな問題も含みます。

社員もこの新しい方向性に応えました。失うものがない危機的状況に陥った時、人は自ら進んで変わるための行動をします。そして、危機を乗り越えた同志としての絆が生まれるのです。ユーモアや仲間意識がその絆を強くし、乗り切ることができます。絆の大切さについて、ナカガワさんは良く理解していました。

さて、今から少し先になる2023年になって、その会社がどうなったか見てみましょう。その会社180度変わっています。パンデミックは収束が見え、パイプラインも充実してきました。さらに、パートナー企業を経由しなくても、自社製品の販売を完全にコントロールできるようになったのです。

会社としてパイプラインが充実し、新たな優れた人材を採用できるようになりました。これで、ナカガワさんが抱えていた課題が解決し、悩みから解放されたと思うかもしれません。しかし、新たな課題が出てきていました。それは、今後の成長をどうするか、自己満足に陥らないようにするにはどうしたらいいか、日本本社に従属するだけではなく、独立した会社としてどう進むべきかなどです。

ナカガワさんは、この新たな課題を解決することができませんでした。危機的状況を救うのは得意でしたが、うまく行っている組織を率いるのは彼の得意分野ではなかったのです。

その会社では、ナカガワさんからバトンタッチして、新しくタカハシさんが社長として就任しました。新社長である彼女は、目標を設定し、新しい考えを導入し、優秀な人材を配置換えして、新しいポジションを与えるなどの改革を行いました。採用にあたっては、個性、エネルギー、情熱を重視しました。同時に、成績が振るわない社員は解雇し、風通しを良くしました。タカハシさんは、「薬を日本の患者さんに届ける」ということを常に一番大切にしています。この信念のもと、必要であれば、本社の要求にも抵抗する強い意志を持っていました。デジタル製品への新しい投資を行う一方、損益をよく見て、可能な限りコストを削減し、継続的にオペレーションの改善も進めました。常に「何がわからないのか」と問いかけを行い、決して決めつけを行わなかったのです。

新薬の予定がない閑散期、逆に売上が上がっている繁忙期は、実は変革のタイミングです。危機的状況ほどチャンスであると良く言われている通りなのです。そして逆の状態である、良い時もまた転機となります。タカハシさんも、「うまく行っているほど、変革のタイミングであり、そのチャンスを決して無駄にしてはいけない」と信じています。

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