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日本の製薬会社におけるデジタルと文化の変革

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ヨーロッパの中堅製薬会社のカントリーマネージャーであるピーターさん(仮名)と初めて会ったのは、彼が2年前に来日した時でした。日本でのビジネス経験はあったものの、経営者の立場になるのは初めてでした。

ピーターさんは、アジア各国でカントリーマネージャーとして、長年にわたり日本人経営者と多くの交流を持っていたこと、さらに日本市場の課題や文化の違いも理解していたことから、日本での新しい役割に対して自信を持っていました。そして彼は、自らが任された会社は変わる必要があり、さらに世界は急速に動いていることを十分に理解していました。

そんな時に、新型コロナウイルスが世界を席巻しました。コロナによって、予想以上に早く変革を推進する必要が出てきたのです。中でもデジタルトランスフォーメーション(DX)は、実施すべきことのトップにありました。そこで、すぐにビック4のうちの1つのコンサルティング会社と契約し、組織のデジタル化を始めたそうです。

私は、そのコンサルティング会社と契約してまもないというタイミングでピーターさんに初めてお会いしました。彼に日本における製薬会社のDXについて聞かれた際に、私は、部外者の立場から見て、ほとんどの企業が同じような状況にあると伝えたのを覚えています。MR間のデジタルコミュニケーション、ウェビナー、M3の活用など、どのようなバランスが正解なのかを議論しました。

ピーターさんは、今後数年間の明確なビジョンを持っており、コンサルティング会社は、ビジョンを実現するためのサポートを提供していました。しかしここまで来て、組織の中に、その戦略を実行するための人材がいないことに気がつきました。その人材とは、会社の情熱とビジョンを理解し、組織のあらゆる機能を変革できる人です。

ピーターさんの熱意とビジョンを理解した私たちは、独占的に仕事をすることを提案し、必要なバックグラウンドを持つ、コンサルティング経験者の情報を集めました。候補者を紹介しようとしたところ、そのうち2人はすでに大手製薬会社が積極的に採用しようと話が進んでいたところでした。また、転職の意思を示した途端に採用されてしまった人もいます。定量的、定性的、財務的なモデリング能力が高く、収益成長戦略の策定や部門横断的な変革を推進した経験を持つバイリンガル候補者の争奪戦が行われていたのです。

Morundaから4人の候補者を紹介したところ、4人目が見事にマッチしました。ピーターさんはその候補者に対してこう語りました。「業界、役割、過去の会社、担当地域など、経験の幅が非常に広い方です。考え方がしっかりしており、意図を明確に伝えることができる能力があります。好奇心旺盛で、起業家精神を持っており、科学、ビジネス、テクノロジーをバランスよく理解しているのもポイントが高いです。未来を見据え、堅実かつ革新的な考え方を持っているのです。要するに、まさに私たちが必要としていた人材です。」

ピーターさんは、その候補者に対して、素晴らしいプレゼンをしました。仕事の内容や要求を並べ立てただけではなく、会社が今後どのようになるかというビジョンを示し、候補者を説得したのです。それによって、候補者の心を掴んだのです。

さらに候補者に入社してもらうために、ピーターさんは、人事部と共に社内の変革を行いました。コロナの影響で、働く場所による制約がないことがわかったのを受けて、その候補者に、大阪を拠点にしつつも必要に応じて東京に来るという働き方を提案したのです。

ピーターさんは、多様な人材、デジタル戦略、卸売業者管理、柔軟な勤務場所などを導入し、現在も変革に取り組んでいます。この変革によって、この会社は、日本のバイリンガルエグゼクティブにとって理想的な会社へとなりつつあります。クリエイティブな人々が世界を変革しているのです。

経営者は、候補者は、「自分にとって何が得なのか」、「自分のキャリアをどう変えるのか」を求めていることを理解すべきです。また、自らが指揮する変革によって、何を実現し、それが世の中にどのように貢献するのかもきちんと理解し、それを伝えることができるスキルが必要です。人の心に響くためには、優れたストーリーを持つことが大切だからです。ピーターさんの場合、本当の変化をもたらすことができるようなポジションは滅多にない、ということを理解してもらえたのが成功の鍵でした。熱意のこもったメッセージは人の心を動かすものです。

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