有終の美
3ヶ月に及ぶ面談と交渉を経て、新しい仕事のオファーを受けた40歳のある中堅職員は、上司にその報告に向かいました。12年以上にわたり、会社のために精力的に働いてきた彼でしたが、次のステップに進むときが訪れたのです。彼はこの報告が問題なく終わることを願いつつ、午後3時に役員室を訪れたのですが、結局その部屋を後にしたのは、その9 時間後でした。上司が自分の貴重な部下が去るのだという事実を受け入れるまでに、9時間も要したのです。その中堅社員いわく、この9時間は彼の人生の中でも、一、二を争うほどの厳しい時間だったといいます。
日本では、会社を辞めることはすでにそれ自体がArt(芸術)であるといえます。日本では、集団や会社という単位、また目上の者を敬うことが、個よりもずっと重要視されます。したがって、退職に際しては自らを鼓舞し、大事なことに集中し、自分の意見に責任を持つことが非常に重要になります。以下は参考までに私が見てきた日系企業での退職プロセスの、経時的なステップです。
衝撃と落胆
最初の段階では、上司は動揺したり、あれこれ騒ぎ立てたりするかもしれません。あなたに罪悪感を持たせようとしたり、もしかしたら昇進を提案してくるかもしれません。でも考えてみて下さい。「なぜ会社は今まで昇進を提案してこなかったのか」と。自分で下した決断を信じましょう。上司の突発的な怒りはそう長くは続きません。人間は時には感情的になったり、物事を個人攻撃と感じたりすることがあるということを、しっかり理解しておくことは、この時期役に立つでしょう。最初の嵐が過ぎてしまえば、たいていの場合人はあなたの決断に理解を示し、今後の活躍を願ってくれるでしょう。
受け入れ
しばらくすると、上司や同僚は、あなたが退職するということを受け入れ、それが現実に起こることなのだと認識していきます。そして徐々に仕事の引継ぎ準備を進めていきます。世の中はこうして回っていくもので、代わりがいないなんていうことは、そうそうないものです。
サポート
この段階までくれば、会社はあなたの決断をサポートし、快く送り出してくれるでしょう。そして話題の中心は、あなたが会社に残した素晴らしい功績へと移り、皆あなたのキャリアアップを祝福し、今後もよろしくということになっていきます。最終的には、大切な人たちは皆あなたを応援してくれるでしょう。
以上が3つのステップですが、あなたの退職を出来る限りスムーズに進めるために、もう数点付け加えておきます。
まずは紙におとしましょう。紙に書き出すことで、ポイントがより明確になり、今抱えている問題を明確に認識できるようになります。そして、転職先の雇用契約書にサインをして提出し、それから退職届に取り掛かります。今までの様々な機会や経験をあなたに与えてくれた会社への感謝を伝える手紙と考えましょう。
上司はかんしゃくを起こすかもしれませんが、彼がまだ最初のステップにあることを忘れずに。この時点では、上司が退職届けを破いてしまう、というようなことも想定して、退職届のコピーを準備しておくといったゆとりも大切です。
また、日を決めることも大切です。上司との面談を設定し、最終出社日を伝えましょう。 1ヶ月先というのが普通です。退職日を決めることで、現実味が増し、タイムラインがはっきりします。今後の予定が曖昧なままだと、簡単にひっくり返されてしまいます。
最後に、批判を個人的に受け止めないことです。すべてはビジネスの上でのことと受け止めましょう。会社があなたを引き止めるためにさまざまな策を弄したとしても、です。最終的には、あなたのキャリアに責任をもつのは、あなた自身なのですから。
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